「データ視覚化のデザイン」を読んで

データ視覚化のデザインはデータ活用コンサルのPATHを経営されている永田ゆかりさんの著書です。

職場ではBIによる可視化を繰り返している私ですが、一度新しい知見を学ぶために本書を手に取りました。

早速感じたことをまとめていきます。

(本記事は引用ではなく私が自身の経験をもとに再考し書いたものであるため、本書の内容とは一部異なります。)

 

BIを見せる人のがどの階級の人なのか意識する

今まで私自身はデータは誰にでも必要とされるものであり、それぞれに役に立つと意識はしていました。それでも階級(いわゆる役員なのかマネージャーなのか現場社員なのか)によって段階的に異なることを知れました。

 

階級 内容
役員 全体 KPI
Q&A
トップダウン
ボトムアップ
現場 詳細 一枚絵

KPI:業績がうまくいっているのかを伝える

Q&A:どうしてうまくいっているのか・いないのかを伝える

トップダウン:うまくいくためにみて欲しい環境の指標や会社の意向

ボトムアップ:マネージャーに現場を伝える

一枚絵:現場の社員が今日の業務を判断するため情報を伝える

 

こんな感じに分かれるのでしょう。

 

プロっぽい可視化とは何なのだろうか

今回本書を手にとって感じたのは「見やすさ」「納得感」「魅きつける力」の3点だと感じました。

見やすさ

見やすさは本書の言葉を借りれば認知負荷を最低まで下げることです。

余計な隙間、余計な色、余計な軸、余計な線全てを省略して、「これは何だろう?」と思わせる回数を減らす。

これは見やすさをロジカルに説明したものであり、読む価値のある内容でした。

 

納得感

データの本質は事象の正しい理解です。ただしBIの半分以上は一人で見ることは少ないと思います。

多くの人と共有する以上、何かを他人に伝えたいことになります。そこにはメッセージが生まれて、そのメッセージを理解してもらはなくてはいけません。

 

納得感のを与えるのに重要なポイントは以下です。

・必要な情報を網羅しているか

・正しいグラフを選定しているか

・正しい並びになっているか

必要な情報を網羅しているかはその都度その現場にリテラシーのある人が実施するしかありません。

正しいグラフの選定については熟練度が必要な領域だと感じました。熟練度を上げていくために2つ意識するべきです。ひとつはグラフの種類とそのメリット・デメリットに関する知識を増やしていくこと。ふたつめにグラフを使ってみてデータに合うかどうか実証実験してきた経験があること。これらを通して正しいグラフの選定に至れると思います。特に本書の中で縦棒グラフをただの数値に変換する事例がありますが、無用にグラフを使う一例として参考になりました。

正しい並びになっているかは単純な話で、一番左上に一番大事な情報を持ってくる必要があると言うことです。

 

魅きつける力

本書の中で紹介していた面白BIをいくつか並べます

 

日本人口消失のえぐみを伝えるBI
https://public.tableau.com/profile/lm.7#!/vizhome/2722/1
初詣スポットをデータとともにポスターっぽくかわいく見せる技術
https://public.tableau.com/profile/yoshihito.kimura#!/vizhome/2_2310/1
従業員の経費分析
https://public.tableau.com/ja-jp/profile/tableau.for.finance#!/vizhome/EmployeeExpenseAnalysis/EmployeeExpenseAnalysis
玉の数をグラフ化する上で一工夫、コロナで先駆けた東洋経済はさすがだなあ
https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/overpitching/

 

配色や見せ方を工夫していて、非常に面白いです。イラストや写真やアイコンも、そのBIが何を伝えたいのか「テーマ」を一瞬で理解させるのに役立ちます。

 

所感

別に良い意味でも悪い意味でもなく薄いです。完結にまとめられているので見やすく、今後は辞書的な感じで側においておきたいと思います。

著者はすでに成熟した環境でBIツールを触っていると感じたので、組織論的な観点からBIを普及したいと考えている人には向きません。

また人間の知覚に関しては触れてはいるものの、表面に限定しているような印象でした。より深く人間の知覚・認知負荷自体に踏み込みたい人は別の本がよいでしょう。